シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


だから、きっと現在どんな姿になっていても、受け入れられてしまうのだろう。


脳内変換が、きっと自分に都合いいように出来ているんだ。


だとすれば、女遊びが激しい煌や、過去沢山の女の子と付き合った玲くんなんか、現在に至る過去を受け入れている時点で、久遠と同じ扱いで。


彼らもまた、あたしにとっては特別だということ。


だけど、櫂だけは。


もしも久遠のような自堕落な生活を送っていたら――


あたしは許せないと思う。


煌のように夜遊びをして、玲くんのように沢山の女の子と付き合って。


そう考えるとむかむかする。


櫂だけは受け入れることが出来ない。


だとしたら、櫂はあたしにとって特別じゃないということ?


「……どうした、ぼうっとして?」


気づけば、目の前に藍鉄色の瞳。


「い、いや…そ、それより小猿くんは大丈夫? ショック受けてない?」


「ショック?」


「え? だって桜ちゃんの本当の姿を見て…」


すると突然赤くなってもじもじし始めて。


「べ、別に男装が趣味でも…俺平気だし…。びっくりはしたけれど」


「は!!? 男装!!?」


男装は男装だ。


だけどもしかすると…



「葉山は男の格好しても…か、かか可愛いし…綺麗だし…」


鏡を見ながら、そう言った。


ああ、恋って人の判断力を麻痺させる。


彼にとって、桜ちゃんはあくまで"女の子"らしい。


あたしの肩の小々猿が、無声音で身体揺すって大爆笑している。


「何だよ、お前!!!」


そういう小々猿の心は、読み取れないらしい。


不思議な子だ。



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