シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「桜ちゃん達は…大丈夫なんだね?
あの逆さ吊りが真実じゃないんだね?」
念を押すように問えば、力強く小猿くんは頷いた。
「ふう、紛らわしいな。鏡なければあたし信じていたよ、きっと。どうにかならないかね、その幻覚っていうの…。何信じて言いか判らないじゃない」
そうぼやくと。
肩の上の小々猿が、ぴょこぴょこ飛び跳ねた。
すると桜ちゃんの下にいた小々猿も、同調したようにぴょこぴょこ跳ね始める。
すると由香ちゃんの所の小々猿も、呼応したようにやはりぴょこぴょこ。
ああ、猿だ。
やっぱり猿過ぎる。
今度は突然何をし始めたんだ、この小々猿達。
またあたしは怒鳴って叱り付ける羽目になるんだろうか。
ああ、出来の悪い子供達を抱えた母親の気分だ。
「ええ!? お前達できるのかよ!!?」
そんな猿の心が判るらしい、小々猿使い。
「嘘くせえな。だってお前今まで働かなかったじゃないか。え? "やれば出来る子だけどやらなかっただけ"…ってお前、俺の分身のくせに生意気言うなよ」
いやいや、小猿くん。
やっぱり小々猿は、君の分身だと思うよ?
思考回路が似ている気が…。
「そんなに自信あるならやってみろよ、幻術破壊」
主に許可を貰った小々猿三匹は、突き出した小さな手を重ね合わせて目を閉じた。
まるで円陣を組んだ猿人だ。
そして。
バリーーーン。
硝子が砕けたような…音がして。
そして見渡せば。
何処までも壁一面だった密室ではなく、まるでホテルのような調度に飾られた…荘厳な部屋に変わっていた。
そう、鏡の中の景色と同じ。
当然、ふかふかのベッドがあって。
桜ちゃんと由香ちゃんが寝ていて。
これが現実と思えば、あたしの顔が喜びに弛み始めた。
そしてあたしは、桜ちゃんの太股から血が流れているのに気づいた。