シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「……ま、……ま……さい」
微かに動く唇から、途切れ途切れの小さな声が漏れているのに気づいた由香ちゃんが、その口元に耳をすませてみれば。
「『櫂様、玲様、お守りできなくてすみません』…意識なくても忠義が篤いなあ、葉山」
そう苦笑して。
「何だか責任感と罪悪感が悪夢化しているみたいだから、さっさと起こしてあげようねえ。葉山を簡単に目覚めさせる方法は……」
そして息を吸い込んで。
「"葉山、大変!!! 紫堂と師匠が!!!"」
そう突然大声を上げたら、
「!!!」
桜ちゃんはぱっちりと目を開けて――
由香ちゃんに襲い掛かる。
条件反射のような動きだ。
「ちゃうちゃう~、ボクは違うから。
目を覚ませ、ボクだ、ボク。
葉山、は・や・ま~!!!」
あたしと小猿くんが慌てて桜ちゃんを制したおかげで、ようやく桜ちゃんは正気に返ったみたいで。
くりくり、くりくり。
大きな目が動いた。
それを見て、ようやくあたしは桜ちゃんを取り戻せたことを実感した。
「良かった、桜ちゃん、無事だ~ッッ!!!」
感極まって桜ちゃんに抱きついて、その桜色のほっぺにちゅうをしてしまった。
「!!!!!!」
桜ちゃんが――
ぴしっと固まってしまった。
ああこの初々しい反応。
可愛いなあ…。
「このクソ女ああ!!! よくも葉山に~ッッ!!! こういうのは、おお王子様の役目と「何処に王子様がいるんだい?」
由香ちゃんの切り返しに、小猿くんはキーキー地団駄を踏んだ。