シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
玲様は…
きっと我慢を重ねすぎていたんだ。
心のままに動けないのは、玲様がお優しいから。
櫂様の心を傷つけたくないという優しさがあるから。
芹霞さんに対して積極的な意思を貫く覚悟を決められた反面、それでもまだ櫂様を大切になさりすぎているから。
芹霞さんを避けた理由は判らないけれど、そうせざるをえなかった不可抗力的なことが起きたのだと、私は思っている。
玲様の…背中のあの疵。
腕にあった注射の跡。
玲様が口を開かぬその理由こそが、きっと玲様の心を更に蝕んでいる。
傷痕と芹霞さんがどう関係しているのか判らないけれど、無関係だとは到底思えなかった。
昨夜間違いなく。
玲様の身に何かが起こったんだ。
ああ、何で私は、昨夜の玲様の行動に気付かなかったのだろう。
後悔ばかりが胸を占める。
何もなければ、玲様はお元気で芹霞さんの傍に居るはずで。
芹霞さんを哀しませることなんかしないはずで。
玲様にとって、芹霞さんは大切な女性なのだから。
全ての事情を考慮しても尚、玲様が諦めきれない程の女性なのだから。
玲様の想いは真剣だ。
櫂様や煌と同じに。
私は――
どうしていいか判らない。
私に、誰かの味方をするなど、出来ない。
私にとって、玲様と同じく櫂様も大切だから。
焦げ蜜柑だって…一応…仲間だ。
私は遠坂由香のように、堂々と誰か1人の恋路を応援することが出来ない。
例え、夢であろうとも。
ホントウニ――
ソレダケノリユウ?