シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

少し。


少しだけなら。


少しだけ、苦しみをやわらげられれば。


私は玲様に声をかけながら、その紫色の唇に液体を垂らした。



「ごめんなさい…玲様…」


たとえ夢だろうと。


私は玲様を、更なる悪夢の深みに連れて行ったんだ。



「ごめんなさい、玲様…」



ああ。


現実はどうなっているのだろうか。



夢から醒めた時、玲様の穏やかな微笑みが見たい。


芹霞さんを避けるでもなく、辛そうな表情をされずに。


玲様が大切になされている人たちと、談笑する玲様が見たい。



この願いは叶うだろうか。


叶ってもらいたい。


そう思った時――




「願い求めよ。

さすれば我は汝等に与えん。


さあ……求めよ。

汝の願いは如何に?」



性別も年齢も推し量れない、そんな不可思議な声が聞こえて。



私の背中をとん、と押した。



だから私は――




< 450 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop