シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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急いで部屋から出て、塔…らしき建物を駆ける。
芹霞さんと皇城翠が、鏡を覗き込みながら先導する。
この2人から、塔にかけられているという幻覚の話を聞いた私と遠坂由香だったが、私達が鏡を覗いても、その景色は何ら変わらず。
半信半疑で思わず遠坂由香と顔を見合わせたのだが、こうして芹霞さん達に連れられて行けば、私達の目を疑わざるをえない。
壁だと思う場所に突き進む私達。
どう見ても空間と思われる場所で、左右に折れる私達。
更には目に見えないドアを開けて進む私達。
何のために…私達の身体に目がついているのか判らなくなる。
鏡に映る世界が真実だというのなら…私が見ているこの景色は何だというのか。
そんな景色を見ている私は、何だというのか。
自問自答を繰り返しても、出てくるものは深い溜息しかなく。
「小々猿が幻覚を壊したのは…あの部屋だけなの?」
皇城翠は芹霞さんの声に頷いた。
「この塔全体の幻術を解くには、式の数が足り無すぎる。全部…7体の力をあわせれば、もしかして可能かも知れない」
お笑い番組に出てきそうな、あの式神を頼りにするとは…此処まで私達は策に窮しているのだろうか。
それでも芹霞さんの家で見た時よりも、遥かに式神の表情は凛々しい。
多分…皇城翠の精神面に大きく影響されるのだろう。
だということは、彼もまた…何かを決意して成長したということか。
気になるのは、彼からの熱い眼差しと、遠坂由香の三日月目。
そしてそれを見て溜息をつく芹霞さん。
私の知らぬ処で、何かが起きているのだろうか。
言葉なき、この窮屈な空気が気味が悪い。