シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
そして玲様は芹霞さんの元に行き、叩き付ける拳を手に取った。


「大丈夫、櫂は僕が助けるから。

君は安心して此処に居て」


「あたしも行く。あたしも櫂を助けに行く。あたしじっとしてられない、櫂に櫂に会って安心したい!!!」


玲様の顔が苛立ったように歪まれた。


「芹霞、僕を信じて「あたしも行く!!! 櫂を助ける!!! いつだってあたしは櫂を助けるんだから!!!」


泣き叫ぶ芹霞さんに――


まるで玲様は爆(は)ぜたかのように、


「君は櫂に近付くな!!!

近寄るんじゃないッッ!!!

過去がどうであれ、現在の君と櫂との間に確かなものなんて何もない!!!」


恫喝とも思えるような、荒げた声を発した。


「玲様!!?」


どうして…

そこまで芹霞さんに冷たい言葉を?


「そんなに――…

あたしと櫂を引き離したいの…? 

玲くんにとって大事過ぎる櫂に、

あたしを近づけさせたくないの?」


芹霞さんはぽろぽろと涙を零した。


「あたしが…そんなに嫌い?」


途端、玲様ははっとされたように身体を震わせて。


「ち、違…そういう意味じゃ…」


「じゃあどういう意味なのよ!!!?」


「それは…」


言い淀んだ玲様から、出てくる言葉はなく。


「玲くんなんて…

玲くんなんて、大嫌いッッ!!!」


芹霞さんがそう叫んだ時。



ゴゴゴゴ。



突然壁が開いて。


それが何故なのか、何処に繋がっているかを確認するより早く、芹霞さんがその隙間から出て行ってしまって。


「芹霞!!!?」


手を伸した玲様が、慌てて芹霞さんの後をおいかけ、その隙間に身体を忍ばされた直後、



ゴゴゴゴ。


再び壁が閉まって。


私も慌てて後を追おうとしたけれど、もう壁は開かなかった。

< 459 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop