シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「計都は…如月と言ったはずだけど?」
慎重に、あたしは言った。
こんな短期間で本名が割れたのだというのなら、相当な情報網があるというのだろうか。
「偽名なんぞ使うから…随分手間をかけさせられた。
しかもあの女…叩いても殴っても最後まで口を開かず気を失うからな。
手帳を見たら、プリクラとかいうお前の写真の横に、住所が書かれてあった」
あの女って…。
そんなもの持っている女って…。
「弥生!!?
あんた、弥生になんかしたの!!?」
「ああ、あの…清純ぶった女、そんな名前なのか」
くつくつくつ。
目を見れば判る。
やはりこの男は、人間を人間と思っていない。
怒りが湧く。
「どうしてそんなことを!!?」
「お前が気に入ったからだ。
調べさせてもお前に辿りつかない。
黄幡計都が見つからないなら、お前とあいつが出入りしていたらしい部屋の奴に、聞くしかないだろう?」
なんてこと。
こんな頭がおかしい男のストーカー被害に、弥生があったなんて。
「暴力なんて…ああ、弥生!!!」
あたしは思わず両手で顔を覆った。
「あんたを警察に突き出してやる!!!」
そう涙目で睨めば、
「どうぞ?
警察が動けばいいがな…?」
くつくつ、くつくつ。
「それだけ、紫堂財閥の力が大きいということ、櫂と共に居るお前なら、判っていただろう?」
「櫂はそんなことをしない!!!」
「どうかな? あいつだって、裏ではかなりのものさ」
「違う!!!」
「美化しすぎると、現実にぶちあたれば絶望するぞ? いつまでも可愛いお前の櫂ではないんだ。8年も経っているならな」
どうして――
見ず知らずの…
櫂と同じような顔をした男まで。
あたしから櫂を消そうとするの?
「まさかお前が、櫂の…"神崎芹霞"だったとはな。もっと早くに写真でも見ておけばよかった。所詮は17のガキだと、高を括りすぎていたようだ」
何より――
知ったような顔をされるのが、一番許せない。