シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「あんた一体、誰よ!!?

あたしと櫂の…いいえ、櫂の一体何を知っているというのよ!!!」



「……俺に興味を持ったか、芹霞」



にやりとした笑いを見せた男に、


「は!! 誰が!!!」


思いきり、侮蔑の眼差しで睨みつけてやった。


「ははは。

そういう気の強さが…溜まらんなあ?」


しかし男の興味を深めただけらしい。


愉快そうに笑う極悪櫂が、あたしの顎を摘んで持ち上げた時。





「芹霞から離れろッッ!!!」




玲くんの声がした。



顔中汗を掻いて、整えたはずの呼吸は乱れていて。


全力疾走したような様子で、駆けつけてきてくれたのだろうことは判る。


入り口があっても出口が無くなったこの部屋に、飛び込んできてくれたことは判る。


判るけれど、今のあたしはそれに対して何の感慨もなく。


後ろから抱きついて引き寄せた玲くんの手の震えを、ぼんやりと他人事のように感じた。


嘘臭いと…感じてしまった。


そう思ってしまった自分を…無性に悲しく感じて。



「離して」



思った以上の低い声で、あたしは玲くんの手を払った。


玲くんが息を呑む音が聞こえる。



「離して。

聞こえなかった?」



もういい。


あたしを無理に心配なんかしてくなくてもいい。


どうせあたしは、玲くんにとっては他人で。


仮面つけて接しないといけない、そんな遠い存在。


本心隠して、無理に接しなくていいから。

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