シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「何だ、全然じゃないか。
返事を変えたいのなら聞いてやるぞ、
――…玲?」
何を笑い出したのかは判らない。
極悪櫂は、玲くんを知っているようで。
玲くんは、あたしの手を掴んだまま、1歩前に踏み出した。
「返事は昨日の通り。
僕は櫂以外の"次期当主"を認めない」
それは冷たいくらい、無表情な端麗な顔。
"昨日"
玲くんはこの男と会っていたの?
玲くんの手は、あたしから離れない。
「では、どうだ?
お前は宣言通り、大事な櫂を守れたか?
1日しか経っていないが?」
愉快そうな、嫌な笑いが辺りに響いて。
「――っ!!!」
玲くんが、苦しそうな顔をして、横を向いた。
「"あいつ"に大見得切った成果はどうだ?
それで、お前の"決心"とやらは貫けたのか?
んん???」
手に…玲くんの力が込められる。
痛いと声を上げても、力は込められたままで。
「女に現(うつつ)を抜かして櫂をも守れず。
お前は何がしたいんだ?
いや、お前如きが何が出来ると思ってるんだ、ああ!!?」
凄んだ端正な顔に、玲くんが歯軋りをしている音が聞こえる。
一体、この2人は何の話をしているのか。