シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「何だ、全然じゃないか。

返事を変えたいのなら聞いてやるぞ、

――…玲?」



何を笑い出したのかは判らない。



極悪櫂は、玲くんを知っているようで。



玲くんは、あたしの手を掴んだまま、1歩前に踏み出した。



「返事は昨日の通り。


僕は櫂以外の"次期当主"を認めない」



それは冷たいくらい、無表情な端麗な顔。


"昨日"


玲くんはこの男と会っていたの?


玲くんの手は、あたしから離れない。



「では、どうだ?

お前は宣言通り、大事な櫂を守れたか?

1日しか経っていないが?」



愉快そうな、嫌な笑いが辺りに響いて。



「――っ!!!」



玲くんが、苦しそうな顔をして、横を向いた。



「"あいつ"に大見得切った成果はどうだ?

それで、お前の"決心"とやらは貫けたのか?

んん???」



手に…玲くんの力が込められる。


痛いと声を上げても、力は込められたままで。



「女に現(うつつ)を抜かして櫂をも守れず。

お前は何がしたいんだ?

いや、お前如きが何が出来ると思ってるんだ、ああ!!?」


凄んだ端正な顔に、玲くんが歯軋りをしている音が聞こえる。


一体、この2人は何の話をしているのか。


< 470 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop