シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「どうだ、玲。
お前の意志1つで、櫂を助けてやるぞ?」
もしも。
もしもあたしの"違和感"が正解ならば。
――そうだ。
何よりあたしが取り乱していないのがその証拠で。
だとしたら。
怪しいのは…
近寄りたくもない、腐乱死体。
「さあ、どうする…?
――玲?」
「どうして…どうしてここまで櫂を!!!」
声を荒げた玲くんに、あたしは振り返った。
「玲くん、騙されちゃ駄目。
これは幻影だよ」
揺れる…鳶色の瞳。
半ば絶望、半ば怒りに満ちた端麗な顔が、あたしの言葉で驚愕に満ちた。
「その根拠は? 小娘」
感情を無くした切れ長の目を、あたしは真っ直ぐに見据える。
「"これ"に、櫂の気配を感じないのが理由1。
櫂があたし達に助けを請うたことが理由2。
櫂の…枷がついた四肢に櫂のもがいた痕がなく…綺麗なままだったのが理由3。
何よりあたしが正常のままでいられるのが、理由4。
櫂は自分で打開策見つけずに、ただひたすら誰かの助けを待っているような奴じゃない。何より自分の身と引き換えに、仲間を危険に曝すことはしない。
あたし…伊達に櫂と幼馴染していないの。
伊達に永遠を言ってないの。
あたしを見損なわないで」
そしてあたしは駆け、悪臭が凄まじい腐乱死体の元に行くと、極悪櫂に言い放った。
「あたしは。
櫂がどんな姿になっても、必ず見つけ出す」
そう言って。
あたしは――
腐乱死体を抱きしめた。
「――…櫂。
助けに来たよ。
――帰ろう?」
その頬に、唇を寄せて笑った。