シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

過去は過去、現在は現在。


櫂との絆の拠り所を、僕の居る現在にも求めないで欲しいと。


脳裏に浮かぶのは、芹霞の大切な赤い宝石箱。


過去の詰まった…現在尚も"大切"にされ続けている…その中に僕のものがなかったのが、たまらなく辛かったから。


せめて、現在を…過去から切り離したかったんだ。


僕以外の男の傍に行かせたくなかった。


そうして爆ぜた衝動的な言葉。


だけど、そんな想いは届くことなく。


僕が突き放した芹霞は、僕のことを思い悩むのを止めて、

僕の存在自体を弾き出そうとしたんだ。


――今まで…ありがとうね。


僕との全てを、ひと言の笑顔で終わらせようとして。


無理だった。


――そんな演技…もういらないよ。


限界だった。


芹霞の目から…

僕に対する心が完全に離れていると判ったら。


――イカナイデ。


もう引き留めておけないと判ったら。


――ハナレナイデ。


僕から手を離した芹霞は、

僕を追いかけてきてはくれずに

違う男の元に行こうとしているんだ。


そう思ったら――


凄まじい後悔が押し寄せた。


芹霞を失わないようにとしたことが、

結果芹霞を失うことになるなんて。


ああ――…!!!



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