シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
行かないで。

離れないで。

拒まないで。


これ以上――

君にとっての特別は櫂だと、僕に見せ付けないで。


僕の想いを壊さないで。


好きだ。


好きなんだ。


君が欲しくて仕方がないんだ。


僕を見て。


僕を愛して。


僕に溺れて。


僕の想いを疑わないで。


思わずそう…

口に出しそうになった時。



「や、やった!!! 30cm以下万歳!!! 頼れる男、只今参上!!!」



皇城家の次男が、突然壁から現われて。


驚いたけれど、"30cm"という単語で、彼は瞬間移動の力を使って現れたのだと悟る。


「…って、芹霞!!! お前腐った死体に何やってんだよ!!? おえ~っ、お前、死体愛好家(ネクロフィリア)だったのか!!?」


ゆっくりと首を振った芹霞の切実な表情に、彼は真面目な顔つきになると…手にしていた鏡を覗き込み、



「――…正解」



そう言った途端――…

芹霞は頷いて、にっこりと微笑んだ。


「鏡なくても判るなんてお前どんだけ? まあいいや、ええと・・・おお、怪しげなスイッチ、みっけ!!!」


翠は鏡を見ながら、片隅の…血がこびり付いたような壁の汚れた部分を手で押した。


ゴゴゴゴゴ。


さっき聞いたばかりの音がして、


「玲様!!!」

「師匠!!?」


桜と由香ちゃんが現われた。


そして腐乱死体を抱きしめたままの芹霞を見ると絶句して。


2人の肩にいる式神が、床に飛び降りて飛び跳ねながら握手をした途端。



バリーーーーン。



僕が夢で聞いた音をたてた。
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