シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「これが…現実。

――力の差だ」


芹霞の…口内を堪能し終わった、艶めいた顔で久涅が笑った。


放心して座り込む芹霞の唇との間を、銀の糸が繋いでいたのを目にした時、僕の目から涙が零れ落ちた。


僕の目の前で。

櫂の目の前で。


僕は…芹霞を守る力すら無くて。

僕はここまで無力で。

久涅は…ここまで強くて。



「いい加減、現実を見ろ玲。お前が、命を賭して守ろうとする従弟は、俺の前には手も足も出ない。言ったろう? 

俺につけ、玲」


――櫂を裏切り、俺の元につけ。


「返事は"NO"!!!

それは永遠に変わらない!!!」


「もう一度言う」


――お前が櫂に与(くみ)する限り、


「櫂を殺すぞ?」


久涅はにやりと笑って。


「力だけではない。その実力の差を…お前は思い知ったろう、昨夜」


僕はぎりと歯軋りをした。


「だから…櫂に張り付いて守ろうとしたのだろう? お前と同じ目に合せないために」


桜の視線を感じる。
桜は判ったのだろう。


僕の背中の傷。


久涅にやられたものだということに。
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