シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

芹霞の悲鳴。

血を吐きながら、久涅を睨みつける櫂。


再度櫂に攻撃が加えられようとした時、


「それ以上はさせない!!!」


桜が横から飛び出して。


裂岩糸を繰り出す前に、歪んだ笑いを浮かべた久涅が動き――

桜の小さな身体が吹っ飛んで、壁に叩きつけられた。


驚異的な敏捷性を誇る桜を上回る速度で、桜に受身の姿勢すらすり抜ける拳。

それを支配しているのは、久涅という男の持つ残虐性。


痛めつければつける程、恍惚の表情を浮かべるこの男にとって、相手の苦しむ姿はより一掃の力の糧となっている。


その時だった。


今まで桜の肩に座っていた式神が宙に舞い、


両手を突き出して…

凄まじいエネルギー砲を久涅に発射したのは。


これは、神崎家を壊した力によく似ていて。


しかし久涅は、式神を一睨みしただけで――

式神を符呪に戻してしまった。


「式の力でも無理か。

式返し――お前かよ…」


皇城翠が悔しそうに叫んだ。


くつくつ、くつくつ。


その笑いは久涅からではなく。


顔を上げた櫂からで。


「そう、みすみす…渡してたまるか」


その切れ長の瞳には、闘志が消えていなかった。
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