シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「次期当主も芹霞も、玲も皆も。


全部俺のものだ」



久涅は鼻でせせら笑う。


「動くことすら出来ないお前が何を言う」


すると櫂は、不敵な笑いを作る。


「動くことが出来ないというのなら、動けるようにするまで!!!」


ああ、いつの間にか…。


芹霞の肩の式神が居なかったことに、今更ながら気づいた僕は…、その式神が、櫂の鎖を密かに解いていたことを知る。


その事態に気づき、舌打ちした久涅が式神を即座に符呪に返すが、主たる皇城翠は上手く行ったと飛び上がって喜んだ。


芹霞の策というよりは…皇城翠の策だったのか。


手に絡んだままの太い鎖を床に投げ捨て、足に絡んだままの鎖を踏みつけ、櫂はゆっくりと…正した姿勢で地を踏みしめる。


それは感動なのか畏怖なのか。


孤高の王が地に降り立った瞬間、僕は自分の震えを感じた。


しかし。


壁から繋がっていた鎖は外れたが、櫂の両手を1つに縛る鎖はまだ外れていなかった。


まるで手錠をかけられたような…拘束状態のままでも櫂は、何1つ動じていなかった。



「"約束の地(カナン)"を思い出すな」


そう天井を見上げて、昔を懐かしむように。


そして僕は、ようやく気づく。


気配。



「本当に――

優秀な番犬だ」



櫂が手を上げた時、



「芹霞、ワンコにピアスを上に投げろ(と№2が言ってる)ッッッ!!!!」


皇城翠の声に呼応するように、芹霞が驚いた顔をして、ポケットから取り出した小さいものを宙に投げれば。


目に鮮やかな橙色が宙に舞い――


「さんきゅ」


それを瞬時に偃月刀に顕現し――


「さて、行くか。

小々猿!!!!」



偃月刀と、何かの細いエネルギーが

櫂の鎖を――壊した。
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