シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「煌!!!!」
芹霞が泣きながら、煌の腕に縋った。
「良かった、生きてた、心配したあああ!!!」
煌は笑いながら、芹霞を片手で抱きとめ、
「ん、まあ…やばかったんだけれどさ、色々…腑に落ちないことあるんだけどさ、まあ簡単に言えば小々猿の活躍でさ」
煌の省略は、さっぱり話は見えないけれど。
「中々いい奴なんだ、小々猿。
俺達戦友になったんだ。な!!?」
意気投合して、逃げ切ったのだろうことだけは判った。
煌が手を上げれば、得意げにふんぞり返った小々猿が軽やかに飛び跳ねて、煌の手に両手でタッチをする。
それが何とも可笑しくて、微笑ましくて…思わず笑みを浮かべてしまう。
それは僕だけではないだろう。
煌の存在が…僕らの気分を落ち着かせていく。
しかし、久涅がゆらりと動いて。
式神の首を横からを手で掴むと…瞬時に握り潰す。
無情な一方的すぎる攻撃により、№2と翠からそう呼ばれた式神は、ただの1枚の紙に強制帰還した。
剣呑な現実が――
また帰ってくる。
「お前、何すんだよ!!!?」
煌が偃月刀を構えるより早く、久涅は既に足を踏み込んでいて。
煌の喉元に手が伸びる直前、僕がそれを横から外気功で弾く。
それを合図に、僕と煌対久涅の対戦が始まった。
凄まじい速度と力。
僕と煌とが押されているのは確かで。
たかが過去における紫堂の次期当主如きに、今までその名を裏世界でも轟かせてもいない癖に…武術にしろ力にしろ、その強さは異常過ぎた。
異常に鍛えられすぎていた。
煌も同じことを思っているだろう。
これだけ強くても、明らかに久涅は――まだ余力を残している。
僕達は、久涅の力の全貌を推し量ることすら出来ない。
…それは、まるで――
五皇を相手にしているかのような感覚。