シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「おい、玲? お前が朝から櫂ばっかり守ろうとしていたこと…何かそれと関係があったのかよ?」


煌の問いかけに、玲は両手の拳にぎゅっと力を入れたようだった。



「ははははは。

言えばいいだろう、玲」



会話を遮ったのは、久涅。


新たに次期当主に任命された玲によって不必要とされ、以降俺すらその存在を知らしめず、行方知れずになっていた…悪評高い兄。


俺と確かに似ているのなら、血は繋がってはいるのだろう。


「櫂は――

肩書きを剥奪されたって」



何を――


言い出した、この男。



俺が…何だって!!?


「櫂は…櫂はお父さんから任命された、ちゃんとした次期当主なのよ!!? あんたの思惑通りになんて行かないわ、嘘つくのやめなさいッッ!!!」


芹霞がいきり立った。


「嘘?

嘘か…。

嘘だと言っているが、どうだ…玲?」



愉快そうに笑う男。


玲は――


何も言わなかった。



「玲くん!!!?


ちゃんとこの男の前で言ってよ!!!

櫂が正当な次期当主だって!!!」



芹霞が玲の両腕を掴んで、ゆさゆさと揺らした。



鳶色の髪は激しく揺れ…


そして俺は――


玲の表情を窺い知る。



玲の目からは涙。


悔しさの混ざった涙。



俺は――


事態を悟る。
< 493 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop