シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「おい、玲? お前が朝から櫂ばっかり守ろうとしていたこと…何かそれと関係があったのかよ?」
煌の問いかけに、玲は両手の拳にぎゅっと力を入れたようだった。
「ははははは。
言えばいいだろう、玲」
会話を遮ったのは、久涅。
新たに次期当主に任命された玲によって不必要とされ、以降俺すらその存在を知らしめず、行方知れずになっていた…悪評高い兄。
俺と確かに似ているのなら、血は繋がってはいるのだろう。
「櫂は――
肩書きを剥奪されたって」
何を――
言い出した、この男。
俺が…何だって!!?
「櫂は…櫂はお父さんから任命された、ちゃんとした次期当主なのよ!!? あんたの思惑通りになんて行かないわ、嘘つくのやめなさいッッ!!!」
芹霞がいきり立った。
「嘘?
嘘か…。
嘘だと言っているが、どうだ…玲?」
愉快そうに笑う男。
玲は――
何も言わなかった。
「玲くん!!!?
ちゃんとこの男の前で言ってよ!!!
櫂が正当な次期当主だって!!!」
芹霞が玲の両腕を掴んで、ゆさゆさと揺らした。
鳶色の髪は激しく揺れ…
そして俺は――
玲の表情を窺い知る。
玲の目からは涙。
悔しさの混ざった涙。
俺は――
事態を悟る。