シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


俺の信じる男の反応に、

これ以上――

何を疑えばいいというのか。


もし玲が一言でも、否定していたのなら。


否定した態度をとっていたのなら。




俺は決して認めない。




俺が――


次期当主の座を奪われたなど。



だけど。



納得出来る自分も居る。



東京で俺が、突然孤立して。


俺に媚びていた奴らまでも、皆が手の平を返して"何か"を恐れて。


或いは、今までの恐れを無くして蔑んでいて。


追い詰められて拉致された場所に久涅が居て。


味方のはずの警護団に攻められて。



突然過ぎる不可解な状況を説明出来るものがあるとすれば、


俺にとって紫堂財閥の力は――

対外的にも、斥力作用にしかなっていないということ。


俺は利用することすら出来ない状況にあるということ。



つまり。


状況的に見れば――

久涅の言葉は、夢物語ではない。




ああ――。


夢であれば。




「願い求めよ。

さすれば我は汝等に与えん。


さあ……求めよ。

汝の願いは如何に?」



もしも、玲と桜と遠坂が逝ったあの悪夢の中で。


蘇生できる"たった1人"を選んでいたら。


あの囁きを受け入れていたのなら。



今頃、事態は変わっていたのだろうか。



選びきれなかったから、俺は全てを失う羽目になっているのか。

< 494 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop