シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

俺は貪欲で。


欲しいものは全て欲しくて。



だから、あの言葉を蹴った。

願わなかった。



大事な奴らを助ける存在は、"誰か"ではなく常に"俺"でありたいと。


俺しかありえないと。


そんな慢心さが…生んだ事態だというのか。




もし――。


俺に反論する余地があるというのなら。



「父上は…ご存知なのか」



もしも。

水面下における久涅独自の動きで招いた現状であるならば、俺にはまだ救いがある。


次期当主の決定権は、現当主にあるのだから。



すると久涅は笑う。



「直接聞けばいいだろう、俺達の親父殿に。先刻から待ち兼ねているぞ、親父殿は」



まるで俺がそう言い出すことを予想していたかのように。



パチン。


久涅が指を鳴らせば、黒い壁が重い音をたてて横に開いた。



そこには、本家から消えた側近と共に立つ――



「父上」



その場の全員が全員、頭を垂らす。



久涅と、ただ狼狽して顔を見合わせる芹霞と遠坂と皇城翠を除いて。



こつこつこつ。


初老の厳めしい顔をした男は、規則正しい靴音を響かせる。


全身鳥肌が立つような威圧感。


毎回親父に対面する時に俺は感じる。


紫堂財閥、7代目当主。


荒くれ者の異能力者達を束ね上げている、相当な力量の持ち主。


俺は…親父の力を未だ見定めることは出来ない。



「親父殿。

弟にお聞かせ願いますか?」


久涅が頭を下げたのが判った。


逆に俺は顔をあげて、まっすぐ親父を見つめる。


昔から厳しいだけの――

愛情などまるで覚えたことのない、父親という名の男を。

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