シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「……櫂?」
芹霞。
いい。
お前は判らなくて。
12年間の想い。
8年前の決心。
俺は自分の想いをもてあまし、どうしようもなくて…勝手に言葉にしただけ。
お前が悪いんじゃない。
全ては俺が招いたこと。
そう。
芹霞を振り向かせられない俺が悪いだけ。
場は奇妙な沈黙に包まれて。
「言葉にした時点で、次期当主の座は失うと…私は予(あらかじ)めお前に告げていたはずだ。それでも言葉にしたということは…その覚悟はあったろう、櫂。"約束の地(カナン)"だからと、私に…隠し通せるとでも思っていたか」
俺は唇を噛み締める。
次期当主という肩書きは、当主の決定によってなされるもの。
当主の決断は絶対的だ。
俺が久涅に対戦を申し出たとしても、今の俺が仮に久涅に勝てたとしても…親父の決定は覆らない気がする。
俺は…8年間。
言われ続けてきたのだから。
芹霞に想い告げずして、芹霞を振り向かせてみろと。
それが出来ずに言葉にしたならば、小娘1人思うように出来ぬ器しかないならば。
…そんな男には次期当主はやれないと。
それでも。
俺は、その枷を十分判っていても…言葉に出さずにはいられなかった。
想いを…形にしたかった。
変えたかった。
報われたかった。
だけど。
何も変わらない現実。
全ては…
無力な俺が悪い。