シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「どんなお前でもお前だ」
そう…定位置のソファからゆらりと立ち上がって笑ったのは、橙色の少年の主人兼幼馴染みたる漆黒の少年。
漆黒の瞳と同色の髪。
憂いの含んだ切れ長の目。
通った鼻筋。
見る者を魅了する類稀なる美貌と、決して彼に逆らうことが赦されぬような…王者特有の威圧感。
何処までも闇色に染まった彼は、己の信条である完璧主義を体現したような稀有な存在。
誰もに畏怖される17歳の少年、名は紫堂櫂(シドウカイ)…2つ名は『気高き獅子』。
「お前、言い方が微妙なんだよ、櫂~ッッ!!!」
橙色の飼い犬の肩を、笑いながら叩いた漆黒の少年は、従兄たる白皙の青年の元に歩む。
「どうした? 随分てこずってるな」
白皙の青年は、溜息をつきながら言った。
「運送屋なんだけれど…違うって言うのに、引越し荷物を運んできたらしいんだ」
「引越し…?」
漆黒の少年の目が、怪訝に細められる。
「…このままだと埒あかないだろう。ドアを開けろ。直接話をする」
家主の言葉に、白皙の青年は仕方がなく頷いた。
後方に、橙色の少年と、黒い少年を控えさせ、白皙の青年がドアを開けると、
「ちわ~っす。運送屋『ブルーアイス』です。で、何処におきましょうか!!」
「あのね、さっきも言った通り…それは間違いだから。誰も此処には引っ越してこないから」
「ええ!!? でも此処で間違いないって言われてるし…」
困惑の表情を見せる、全身青色のツナギ服を着た運送屋。
6人いる。
「誰に言われている?」
少しだけ…嫌な予感がした漆黒の少年がそう問えば、運送屋はその威圧感にたじろぎながら…端に寄る。
「はろはろ~!!!」
奥から堂々と…青い外套を身に着けた男が、手を振りながら現れた。