シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
氷皇はあの後――
遠坂由香と榊を連れて闇医者に付き添った。
それだけ、氷皇にとって榊という存在は大きいモノだったのか、それとも私達を"泳がす"時間をわざと作ったのか、判断することは難しいけれど。
折角出来たチャンスを無駄にはしたくない。
皆がそう決意めいた顔を合わせた時。
櫂様の肩に頭を預けて、芹霞さんはとろとろと微睡み始めていて。
緊張が解けたのだろう。
櫂様は――
愛しくて溜まらない…そんな甘やかな眼差しを向けて、その頭をひと撫でして微笑むと…抱きかかえて立ち上がり、青く染まらぬ部屋に連れた。
それを、切ない眼差しで見つめるのは玲様と馬鹿蜜柑。
芹霞さんが寄り添ったからとはいえ、いつでも…堂々とその権利を施行出来る櫂様は、やはり彼らの羨望と嫉妬の対象なのだ。
少しでも2人きりの部屋からの戻りが遅ければ、馬鹿蜜柑は傍目でもはっきり判るくらいに苛々し始め、玲様の顔も曇り…静かに表情が消えていく。
芹霞さんを巡り、あまりにも近すぎる位置に居る3人。
微妙に保たれる均衡状態。
誰かが大きく動けば、何処かで大きく音を立てる。
まるで硝子の…玻璃の上にいるようだ。
それでも――
彼らの…櫂様に対する忠誠心は揺るぎなく。
それ故に、進まぬ彼らの恋心。
進展を望まぬ私の方が、気は楽だ。