シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


手加減…すればよかったか?


だけど、これは男と男の…拳での会話。


櫂が全身全霊で俺に助けを求めるのなら、俺は全身全霊で応えるだけ。


俺はお前を裏切らねえ。


そんな俺の心、櫂は痛みとして汲み取ったはずだ。


本来ならありえねえ、護衛が櫂を殴るなんて。


いつもなら桜あたりが血相変えて俺をそれ以上にぶん殴るだろうけれど。


場は、しんと静まり返っていた。


俺と櫂とは、主従関係があると同時に――対等だ。


そこいらの友情以上の…深くて強い絆がある。


誰にも異議など唱えさせてやらねえ。


この立場(ポジション)だけは死んでも譲らねえ。



櫂がこっちに歩いてくる。



場の沈黙を破ったのは、当主だった。



「……ほう、櫂。当主である私に、そんな目を向けるか」


動じねえ当主の声が響く。


どことなく愉快そうな口調から思うに、それは予想想定内だったのか。



「俺は…まだ了承していない」



櫂は、久涅を見て言った。

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