シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
周涅?
小猿が嫌っている、七瀬の兄か?
は?
何で氷皇?
「あははは~、あっちでもこっちでも、俺はよく間違われるなあ。ドッペルゲンガーかな、あはははは~」
それでも満更ではない顔は、やはりいつものように意味ありげで。
「小猿くん、この青い人、瀬良蒼生ちゃん」
芹霞が氷皇を指差しそういえば、
「周涅じゃ…ないのか?」
小猿は、胡散臭そうな顔で眺めている。
「瓜二つの顔と物言いなのに…。まあ周涅は髪も銅色だ。同じ色の10円硬貨より万札と純金をこよなく愛する、派手好きな守銭奴だけどな。お前…双子いないのか?」
「いたら嬉しいねえ。だけどこんないい男が他にいたら、俺…嫉妬しちゃうな、あははははは~」
誰か、嘘臭い笑いを止めてくれ。
耳障りで仕方がねえ。
――あっちでもこっちでも、俺はよく間違われるなあ。
俺は…俺を拉致った"あの男"を思い出す。
「氷皇。本当にお前そっくりのあの銀男は知らねえのか?」
あの男も氷皇そっくりだった。
「だからしつこいよ、ワンワン。どうして俺が銀色なのさ~」
そうなんだよな、氷皇が銀色になる時点で同一人物ではないと思うけど。
だけど、こんなにいけすかない顔の男が複数いるっていうのも、異常だ。
こんな顔、俺は他にも見たくねえ。
「氷皇そっくりな銀男…?」
それまで黙っていた桜が、目を細めて訝った声を出した。
「どうした、桜?」
「私達を拉致したのもそいつだから……」
あいつは…完全敵側か。
俺が気づいたときには、あの銀男はいなくて、頑丈な手錠に繋がれていた俺を氷皇が救い出し…何故か傍に居た小々猿と逃げてきたんだけれど。
「あははは~、俺そっくりの銀サン銅サンか。陽チャンがいれば、金銀銅で入選だ。あははは~」
俺、橙色も嫌だけれど、氷皇に染まった青色と銀色と銅色も敬遠したい。
そんなことを考えていた俺の横では、
「はろはろ~、久涅ちゃん」
氷皇が、久涅に向かって手をひらひら振り、久涅の顔が、嫌そうに歪んでいた。