シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「10年ぶりくらい? もっと前かね~、こうして当主の父上挟んで次期当主だった君に会うのは」


見知った仲というのか。

だけど久涅は明らかに氷皇にいい念を抱いていない。


「これはこれは氷皇、ごきげんよう」


当主は頭を下げた。


「ん。悪いけどさ、カイクンと愉快な仲間達は、今…俺の部下なんだ。勝手なことされちゃ困るんだよね?」


軽口の中の威圧感。


「口出しするようなら…

元老院として審議の場に引きずり出すが?」


口調が変わった途端、場の温度が急激に冷える。


酷薄めいた顔。


氷皇の顔だ。


本当にこいつのスイッチは突然入るから、ついていけねえ。


「あははは、それは困りますなあ、氷皇」


嫌疑がかけられているのは知っているだろう癖に、当主のこの余裕はどうしてだ?


豪胆なのか、狡猾なのか。


俺は氷皇同様、当主の腹の底が見えねえ。


「では。具体的にどうせよと?」


当主の問いに、氷皇は微かに笑う。


「明日の夜、横須賀軍港にて開港記念式典が開かれる。真夜中0時ジャスト。汽笛が鳴り終えるまでに、式典に"急遽出席することになった"当主の元に、櫂が来れれば櫂の勝ち。それを妨げられれば久涅の勝ち。妨げる方法は問わない。俺が立会人だ。

そして勝った方に次期当主の地位と、芹霞が贈られる」


「氷皇!!!」


険阻な顔をして、怒鳴ったのは玲で。

途端に氷皇の口調は、揶揄のものに戻る。


「あれれ、自信ないの、レイクン。それまでカイクンを守って、送り出す自信。もしかして、今回のことで自信失っちゃったの、あははは~」


「違う!!! 櫂に…争わせるな!!!」


ああ、玲は。


骨肉の争いにさせたくないのか。


だけど…それ以上の何かを感じるのは何故だろう?

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