シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「…櫂を殺してもいいんだな?」
残虐めいた笑みを浮かべて、久涅が言った。
「勿論。弱い男は、俺も必要ないし。本気でどうぞ、そうじゃないと君も面白くないもんね、カイクン?」
櫂は――
鋭さ秘めた漆黒の瞳を氷皇に向け、
「ゴールが…東京を根城にした紫堂勢力外の神奈川なのは何故だ?何故横須賀だ?」
「それは久涅クンへの課題。勢力外の土地でどう追い詰めるか」
久涅は…にやりと笑う。
「成程。紫堂外の勢力を堕とせということか。例えば…東京以外に神奈川にも強い、皇城とか」
「あ!!?」
小猿が飛び跳ねた。
「どうしてそこに皇城だ!!?」
しかし久涅は笑うだけで何も答えず、氷皇もまた同じ反応で。
「さて、では弟チャンにも課題を授けよう。さてさて、何にしようか。ねえ…何がいいと思う?」
氷皇が問うた先は、マスターオッドアイ。
何故其処にオッドアイが出てくるのか判らないけれど。
「では…横須賀に赴く前に、エディターの悩みを解決して頂くのは?」
オッドアイはにこりと笑った。
「は?」
櫂が訝った声を出した。
「折角念願の"王子様"が見つかり、願いが叶うはずなのに…ふさぎ込んでいるエディターを見るのは忍びなくて。だとすれば運命的な"王子様"もいることだし、エディターに真の…安心した笑顔を」
何だそりゃ。
「あははは~。悩める者を救うのが宗教家なのに、他人に救いを求めるのか。それもいいね~、"王子様"?」
氷皇が意味ありげな笑いを向けたのは、玲。
玲が、エディター上岐妙の運命的な"王子様"?