シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
・恭順 桜Side
桜Side
***************
私は――
元々、氷皇という男を信用していない。
毎度望みもしない登場があるのは、救い手としてではなく。
何か必然的な…私達を追い詰めるような"裏"があると、常々警戒してしまうのは私だけではないはずだ。
五皇自体、その出現は神出鬼没なれど。
何故氷皇がそうした提案をしたかを考える前に…
此処には居てはならない――
居て欲しくない人が現われてしまった。
後方に整列した紫堂の警護団を、割るようにして堂々と現われた隻腕の女性。
燃え盛る紅蓮の炎色。
慈愛深く、神々しい――
氷皇と双璧と呼ばれる最強の女性。
熾烈な赤色の外套を翻しながら、現われたのは…
五皇が1人、紅皇たる…緋狭様だ。
ありえない。
これこそ幻覚。
いつもの私ならそう思うだろうけれど…私が崩れる寸前、ぼやける視界にちらついた赤色。
――黄幡会本部へ。
聞き間違えあるあの声は。
私達に仇為した声の主は。
確かに――
緋狭様の声だった。
ずきずき、ずきずき。
私の…抉られた太股が痛み出す。
最近の私の痛覚は、絶えず飲み続けているあの薬で、幸いにも激痛さえ一過性のもので鎮痛化出来るけれど、突如走るこの痛みは…本当に傷口からもたらされるものなのか、自信がない。
「参るのが遅くなり申し訳ございませぬ」
片膝をついて、緋狭様は…当主と久涅だけに、恭しく頭を垂れた。
その光景は――
今まで私が見たことがない…明らかな主従関係があった。
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私は――
元々、氷皇という男を信用していない。
毎度望みもしない登場があるのは、救い手としてではなく。
何か必然的な…私達を追い詰めるような"裏"があると、常々警戒してしまうのは私だけではないはずだ。
五皇自体、その出現は神出鬼没なれど。
何故氷皇がそうした提案をしたかを考える前に…
此処には居てはならない――
居て欲しくない人が現われてしまった。
後方に整列した紫堂の警護団を、割るようにして堂々と現われた隻腕の女性。
燃え盛る紅蓮の炎色。
慈愛深く、神々しい――
氷皇と双璧と呼ばれる最強の女性。
熾烈な赤色の外套を翻しながら、現われたのは…
五皇が1人、紅皇たる…緋狭様だ。
ありえない。
これこそ幻覚。
いつもの私ならそう思うだろうけれど…私が崩れる寸前、ぼやける視界にちらついた赤色。
――黄幡会本部へ。
聞き間違えあるあの声は。
私達に仇為した声の主は。
確かに――
緋狭様の声だった。
ずきずき、ずきずき。
私の…抉られた太股が痛み出す。
最近の私の痛覚は、絶えず飲み続けているあの薬で、幸いにも激痛さえ一過性のもので鎮痛化出来るけれど、突如走るこの痛みは…本当に傷口からもたらされるものなのか、自信がない。
「参るのが遅くなり申し訳ございませぬ」
片膝をついて、緋狭様は…当主と久涅だけに、恭しく頭を垂れた。
その光景は――
今まで私が見たことがない…明らかな主従関係があった。