シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「何故緋狭が、此の場にいるのかという顔をしているな?」
あまりの驚愕に言葉を発せられない私達に、投げられたのは当主の声。
「次期当主に仕えるのは、緋狭の務め。"かつて"お前も玲もそうだっただろう?」
強調される"かつて"という言葉。
当主が薄く笑って櫂様を見れば…彼はただ屈辱に唇を噛んで、詰るように緋狭様を見ていた。
櫂様が、信じ難い光景に…揺さぶられていた。
「なあ、緋狭。お前が仕えているのは誰だ?」
「久涅様です」
そのきっぱりとした物言いに、
私は絶望的な気分になった。
玲様にも櫂様にも見せたことない、完全に傅(かしづ)いた紅皇に。
事態は抗えきれぬほど切迫していることを知る。
「俺の為に、櫂を殺せるか?」
くつくつ、くつくつ。
久涅の笑いに。
「御意。次期当主たる久涅様の命令であれば」
ああ――
なんてこと。
悪夢だ。
「久涅様に仇為す者には、
どんな命でも奪いましょう」
夢なら早く醒めて欲しい。