シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「緋狭姉…嘘だよな?」


煌が裏返った声を響かせた。



「緋狭姉は…俺達を、櫂を裏切らないよな?」



褐色の瞳は、懇願の色を強めて。



「あんたは…

どんなことがあっても敵じゃないよな?」



「――煌」



緋狭様は、ゆっくりと言った。


まっすぐに、黒い瞳を…褐色の瞳に合わせて。



「夢は――醒めるものだ。


醒めて見る景色こそ、現実」



「緋狭姉!!! どうしちゃったの!!? 煌だよ、櫂だよ、"坊"だよ!!?」


芹霞さんが叫んだ。


「悪いな、芹霞。妹の大事な幼馴染だろうと、久涅様は特別なのだ」


「お姉ちゃん!!?」


「あははははは」


笑いだしたのは久涅。


「いいねえ、いいねえ、櫂の絶望的な顔!! そんなに緋狭がこちら側にいるのがショックなのか、次期当主剥奪を聞いたよりも、随分と動揺しているじゃないか、ええ!!? 『気高き獅子』さんよ、さっきまでの不遜な態度はどうした!!? あははははは」



私達を強く結びつけてきた、崇高な赤色は。



「出でよ、金翅鳥(ガルーダ)!!!!」



緋狭様の…紅皇の攻撃の色となり。



「燃やし…尽せ!!!」



紅皇の盟友である、炎の神鳥を私達に放つ。


そこには躊躇いもなく。


真っ直ぐ…私達に牙を剥く。



赤色は……


私達を滅ぼす色となる。



本気だ。


緋狭様は――


本気なんだ。

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