シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
すると玲様は苦笑した。
「確かに僕達は"自称"親戚は多いよね。異能力集団の寄せ合わせの家系ともなれば、自分の血を多く残しておきたいという種の保存本能が働いて居るのだろうけれど」
「何だか…紫堂って、発情期の動物並みだな…って、桜!!! 何で俺を見る!!? 俺はワンコの話をしてねえぞ!!?」
犬扱いを嫌うくせ、その実自ら"ワンコ"と繋げる馬鹿蜜柑。
"発情"繋がりに決まってるのに、そこは完全スルーらしい。
「"次期当主"候補も数多いんだな、紫堂って。その中でも頂点に君臨できる櫂は、やっぱすげえ奴なんだろうけどさ。
なあ、玲の場合は、父親は現当主の兄だろ? 玲が"次期当主"だった時は、直系の候補はいなかったのか?」
空気を読めない、直球(ストレート)過ぎる馬鹿蜜柑。
玲様が次期当主剥奪されたことにより辛い目に遭ってきたことを知っていて、どうしてわざわざそれをぶり返すような話題を持ち出すのだろうか。
どうして…を考えるあたり、私の方が愚かなのか。
この馬鹿蜜柑の脳味噌は、どうせカラカラに干からびているのだから…深く考えることは出来ないのだ。
「お前の時は、前に次期当主いなかったのか? お前すんなりと、指名受けて次期当主になれた派?」
無邪気そうな質問を向けてくるから、余計にタチ悪い。
私が思わず舌打ちをして、話を終わらせようと口を開きかけると、
「桜。気を回さなくていいから」
玲様は、手を軽く上げて私を制し…そして煌に、嫌な顔をせずふんわりと微笑んだ。
玲様が過去の冷遇された事実を乗り切ったのか、まだ引き摺っているのかは判らないけれど、玲様に止められれば私はこれ以上何も言えない。
「僕の前にもいたんだよ、直系の次期当主は。実力はあったらしいけれど、現当主を殺そうとして失敗して、それで僕に廻ってきた。その後彼は、母親ごと消息不明。表向き"排斥にて追放"だけれど、きっと殺されたんだろう、母親ごと。母親は正妻だったのに、堕ちるのは早すぎた」
「"久涅(クズミ)"…だったか。俺は名前だけしか聞いたことがないがな」