シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「私達にとって団長は憧れです。
団長が崇拝する櫂様を近くでお守り出来るなんて…本当に羨ましかった。
ははは…やはり、駄目か。
団長に全て任せようとするのは、甘すぎたか…」
そして副団長は、顔を引き締めて言った。
「では。これからは敵になります」
それは宣言で。
「我ら警護団、全力で櫂様のお命頂きに参ります」
それは誰からの命令だったのだろう。
「――今から、2時間後に」
「……え?」
「2時間したら、我らは動きます。
団長達が何処にいても、何をしていても…見つけ出して攻撃を致します」
それは。
「ですから。
2時間の間、ご準備をして下さい」
「…それは、誰の命令だ?」
煌が訊いた。
「私は、団長に次ぐ力があります。ですがこれで…精一杯。何とか皆で2時間、誤魔化し通します」
「ありがとう」
玲様が微笑んだ。
「私に出来るのは、これくらいです。
これは私の…いえ、警護団全員の意志。
2時間しか猶予無きこと、お許し下さい」
副団長が深く頭を下げると、後方の集団も揃って頭を下げた。
「恩は――忘れない」
櫂様がそう言って、
「行くぞ」
身を翻して、私達を促した。
少しだけ。
櫂様の顔が、『気高き獅子』に戻った気がした。
次第に遠ざかる警護団の気配。
本当に今、動く気はないようで。
――団長、お戻り下さい。
私は、微かに震える唇を噛んだ。