シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「使えよ」
皇城翠が、緑色のハンカチを私に差し出した。
「え?」
「拭けよ、涙」
言われて初めて…
私は目尻から涙を零れていたのを知る。
気付かなかった。
「お前…仲間に恵まれてるな」
羨ましそうな翠の声に――
私は…深く頷いた。
きっと…櫂様の人徳だろう。
櫂様が…当主や久涅のようであったら。
警護団は一時であろうと、見逃したりはしない。
櫂様は…
やはり、紫堂にとって必要な方なんだ。
再認識する。
「?? なあ葉山、ズボンから何か落っこちそうだぞ?」
皇城翠の声に、ズボンのポケットを見れば、コルク栓が見えていた。
これは…"あの薬"が入った最後の小瓶で。
「!!!」
それを取り出して見た私は、あまりの驚愕に、思わず片手で口を押さえた。
半分に減っていた。
私は――
飲んだ覚えはない。
栓はきちんとされ、零れた気配もない。
だとしたら。
私は玲様を見た。
玲様は櫂様と何かを話し込んでいて。
錯乱の影すら見せていない。
どくん。
どくん。
私の心臓が嫌な音をたてる。
――助けて…。
あれは――
夢ではなかったというのか?