シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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外界の気温は益々下がり、指先がかじかんでくる。
その中、浮浪者のように彷徨うあたし達は…屈辱だった。
宿もなければ金もなく。
手持ちの金で何かを売ってくれる者もなく。
まるで、お涙頂戴の貧乏話だ。
「何だよ、これ…ちくしょう!!!」
煌が吼える。
「常日頃あれ程櫂を『気高き獅子』だと持て囃して、勝手に畏怖して媚びへつらってきた癖に、今では迷惑そうな顔をして無視(シカト)なんて。何だよ、櫂だぞ!!?櫂なんだぞ!!?」
口を挟んだのは小猿くんだった。
「東京に出回っているんだよ。紫堂に手を貸すなっていう…命令がさ」
彼も悔しそうで。
「失脚した男に価値はない。見切りをつけたんだろう」
くつくつ、櫂は笑う。
「これなら命を狙うと宣言した警護団の方が、余程人情味に溢れているな。ははは、非情な紫堂の方が温かい、か」
東京は。
都合いい時にだけ櫂を利用して、
都合悪くなれば簡単に見捨てられる街だと。
そんなに薄情な街だと、初めて知った。
櫂のおかげで繁栄した場所もあるだろうに、
櫂のおかげで救われた人間もいるだろうに。
困った時に見捨てられる人間なんて、最低だ。
誰もが、櫂という人柄ではなく、その背後の権力しか見ていなかったという事実が腹が立つ。
櫂という個人を見て、慕い敬っていた人間は誰もいないのか!!?
「これも…人徳かな」
寂しげに笑う櫂を見る度、心が痛くなる。
櫂が何をしたっていうんだ。
悪いのは――櫂じゃない。
悪いのは――
――好きだ。
あたしだ…。
――男として、お前が好きだ。
櫂にそう言わせてしまった、あたしが。
あたしが!!!
あたしが櫂を追い込んだんだ。
あたしの存在が、櫂を苦しめているんだ。