シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
神崎家に戻ろうという話も出たけれど、2時間の限定内での作戦会議するならば、ウチよりも広尾の方が距離的に都合がよく。


何故か紫茉ちゃんだけが買えた切符のおかげで、皮肉にも紫堂財閥の所有の私鉄に乗って、広尾に向かう。


電車には乗客はなく。


櫂は拳を握りしめ、黙り込んでいた。


そんな櫂を励ましたいのに、今あたしから出る言葉はきっと、嘘臭いものでしかないから。



ああ、あたしは――


櫂に、何て声をかければいいのだろう。



――芹霞ちゃあああん!!



8年前、天使のあたしの櫂は――


紫堂を手に入れる為に、姿を変えた。



あたしは8年前、


――俺だよ、芹霞。


紫堂の存在に負けた。



突然姿も性格も、全てを変えた櫂。

あたしとの思い出を消し去った櫂。


あたしに守られ続けていた櫂は、あたしを守り続ける側になった。


命すら…守り続けられる存在になった。


不可能なことさえ、可能に出来る男になった。


あたしだけを頼り切っていた可愛い櫂は、忽然と消えてしまったんだ。


――彼の意思によって。

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