シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「どういうことだ?」
七瀬が眉を顰める。
「この派手な荒し方は"見せしめ"の意味が強い。
つまり。お前達が俺達を手助けをするという前提で、前もってなされたものだ。
俺達が必ず此処にくることを見込んだ上で、俺達を精神的に追い込もうとしていたんだろう。
言い方を変えれば」
俺は翠を見据えた。
「お前達を使って、そうなるように仕向けられていた、とでも言えるのかもしれん」
「はあ!?」
翠が素っ頓狂の声を出した。
「小猿が家に居る時は襲わないで、出た途端…ってな感じだな。この時刻…芹霞と丁度木場公園で小猿と桜の携帯で話していた頃だし。ああ、そうだ、芹霞。桜に携帯返せ」
「ああ、そうだ。忘れてたよ。はい、桜ちゃん。ありがとうね、落としていてくれて」
「え…? あ…私、携帯落としていたんですか?」
「え? じゃあ自然落下だったのか。ラッキーだったね、煌。あんな草の茂みに落ちていて、あそこで小猿くんからの電話なければ、携帯が見つからなければ、櫂達が黄幡会に拉致られたかもっていう情報得られなかったし」
それは――
「出来すぎだな」
俺は目を細める。
「まず、桜の携帯。緋狭さんが居て、携帯を落としたことに気付かないわけないだろう。そこまで彼女は抜けてはいない。しかも見つかりにくい場所に落ちていたんだ。そして、芹霞と煌がそれを見つけられたのは翠からの電話。お前が電話をかけたきっかけは?」
翠は途端に真っ赤になって、ちらちら桜を見始めた。
俺を含めてそんな翠に怪訝な顔を向けたが、芹霞と煌だけは顔を見合わせて苦笑している。
そして何か口を開こうとした翠は、突然手を叩いた。
「ええと、チビから電話かかってきて。それであ、電話っていう手段があったなと思って」