シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「しかし。確かに2種の武器は見たけれど…凱も雅も、何の変化もなく…」


惑ったような桜の声に、翠が笑う。


「ああ、それはきっと…雅はまだ"出ていない"んだ。雅は口調からしてロリロリになるから。本当に気持ち悪いから。想像してみろよ、男なのにロリ口調って。全身に蕁麻疹出そうだろ?」


俺達は一斉に――

桜を見た。


"約束の地(カナン)"からの帰還後、桜は格好は以前のような女装はするけれど、女のような口調を止めた。


どんな心境の変化があったのかは判らないけれども。


桜の顔が、ひくんと引き攣った。


「…小猿くん…自爆」


芹霞の呟きが聞え、煌が大笑いしていた。



「話を戻すぞ。その凱とやらは今、何処にいる?」


「判らないんだよな。桐夏の学祭後に行方不明。まあいつものことなんだけれどさ。突然何ヶ月も帰ってこないことあるし」


「学祭に何かあったのかな?」


「まあ…お前達のゲリラライブに奇襲かけようとして失敗していたからな。ふて腐れていたんだろうけど」


「おお、見てたのかあれ!!!…じゃなくて!!! んなことやろうとしてたのかよ、小猿!!!」


「俺じゃないって。チビだ、チビ。だけどよ、照明係の赤い女と青い男が、目茶苦茶強くてさ、手も足も出なかったんだ、チビ」


赤と青。


彼らは俺達を守ってくれたのか。


そう思えばこそ。


――久涅様に仇為す者には、どんな命でも奪いましょう。

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