シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

愛情がない父親いえども、ああした…あからさまに頑なな"拒絶"を向けられるのは、息子という立場からすれば少しは傷つく。


俺を排斥した後、親父は絶対俺に手は差し伸べず、逆に…これ幸いと、徹底的に潰しにかかるだろう。


弱者は生きる価値がない。

野に追放か、即座の死か。


それが彼のスタンス。


だから俺が玲を打ち負かした時は、玲に危険が及ばないよう、必死に玲を守ったんだ。


かつて、親父に愛された俺の従兄を。


久涅にはそんな心など、俺に持ち合わせていない。


向けられるのは、嫉妬のような憎悪。


久涅が俺に苦痛を与えたいが為に、俺が大事にしている奴らを痛めつけるかもしれない…俺はそれが気掛かりだった。


皆がどんな目にあっても、俺が守れる力がないならば…あの悪夢のようなことが現実に起きてしまうかも知れない。


真っ平だ。


そして――

芹霞に興味をもったらしい久涅。


それにどうしようもない焦りを感じる。


芹霞は、魅縛する瞳を持つと…以前緋狭さんから聞いたことがあるけれど、初対面の久涅まで魅了したのか。



鎖に繋がれた俺の目の前で、久涅が芹霞の唇を奪った時。


怒濤のような憎悪が渦巻いた。


頭が沸騰した。


俺の芹霞を、俺の目の前で蹂躙するなんて。


それを俺が助けられないなんて。




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