シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

それがましてや、俺と似た顔なんて。


あの男は…欲に満ちた艶を放ちながら、挑発的に俺を見ていたんだ。


味わうように、貪る様に…"男"に溶かされる芹霞を見せつけ、優位性を誇示した。


俺だけが、特別ではないのだと、嘲った。



俺が――


好きで好きで仕方が無い、

欲しくて欲しくて仕方が無い、


そんな女を相手にしていると、十分判った上で…。


芹霞をとことん喰い尽くしてやる、そう目で宣言していた。


矜持なんて関係なく、ただただ…心が軋んで壊れそうで。


これ以上のことが繰り広げられたら、俺は正気ではいられない。


俺の芹霞だ。


俺が12年間、想い続け…大事にしてきた芹霞だ。


もう俺は――


例え死んでも指1本触れさせない。


だけど思うんだ。


そんな事態が現実になったとしたら…


俺が命を差し出したその時点で――恐らく芹霞の気性なら…俺を助ける為に体を投げ出すだろうと。


それを回避するためには、どうしても久涅に勝たねばならない。


紫堂の勢力を凌いで、横須賀にいかねばならない。


俺が挫ければ…死よりも恐ろしいことになる。


芹霞は――

俺のものだ。



そう言い張る為には、次期当主という肩書きが必要だ。


久涅を押さえ込む、"王子様"の力。


全ては…芹霞の為に。


< 557 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop