シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
それがましてや、俺と似た顔なんて。
あの男は…欲に満ちた艶を放ちながら、挑発的に俺を見ていたんだ。
味わうように、貪る様に…"男"に溶かされる芹霞を見せつけ、優位性を誇示した。
俺だけが、特別ではないのだと、嘲った。
俺が――
好きで好きで仕方が無い、
欲しくて欲しくて仕方が無い、
そんな女を相手にしていると、十分判った上で…。
芹霞をとことん喰い尽くしてやる、そう目で宣言していた。
矜持なんて関係なく、ただただ…心が軋んで壊れそうで。
これ以上のことが繰り広げられたら、俺は正気ではいられない。
俺の芹霞だ。
俺が12年間、想い続け…大事にしてきた芹霞だ。
もう俺は――
例え死んでも指1本触れさせない。
だけど思うんだ。
そんな事態が現実になったとしたら…
俺が命を差し出したその時点で――恐らく芹霞の気性なら…俺を助ける為に体を投げ出すだろうと。
それを回避するためには、どうしても久涅に勝たねばならない。
紫堂の勢力を凌いで、横須賀にいかねばならない。
俺が挫ければ…死よりも恐ろしいことになる。
芹霞は――
俺のものだ。
そう言い張る為には、次期当主という肩書きが必要だ。
久涅を押さえ込む、"王子様"の力。
全ては…芹霞の為に。