シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ねえ、師匠…シャワー遅いね。大丈夫かな、また発作起こしたりしてないかな」
遠坂の声で現実に帰る。
「!!! あたし見てくる!!!」
居間の片付けをしていた芹霞が立ち上がって、ぱたぱたと駆けていった。
テーブルには、ホテルから返却された荷物の中から取り出した、予備のノート型パソコン。
遠坂は玲に言われて、何やらプログラムを組んでいる。
――こっちで独自ネットワーク確立でもしないと、現段階…事実上ネットにアクセスしただけで回線が遮断されるから、情報網が皆無だ。よし。外部のプログラムを盗んだから、これ基軸にとりあえず改良すれば。
――由香ちゃん、桜華で見たワームの亜種のプログラム覚えているだろう?あれを真似して疑似でいいからワームプログラムを至急作ってくれないかな。
「うーん、師匠は軽く言ったけど…やっぱりボクレベルには難しいな。東京の電力を一部完全隔離して、そこにこっちが作った、突然変異型ワームを放って…プログラムの急速度の育成&調教なんて」
「お前…そんなこと出来るのか?」
画面を覗き込んでいた翠が、目を丸くさせて驚いた顔をした。
「大体、0と1で何が出来るんだよ?」
確かにそうだ。
「0と1を馬鹿にするなよ、この2つの組み合わせは無限大の可能性があるんだから。可愛いじゃないか、言葉を発しているんだぞ、ちゃんと」
すると翠が俺を見て、唇を動かした。
"きちがい?"
「違うよ、ボクはまともだ!!! もうホント、師匠しか判って貰えないや、0と1の偉大さは!!!」
それは玲も同じだろう。
玲が今まで相手にしてきた0と1の理解者は、きっと遠坂だけだ。
「何だよ、お前オタク? 電子基盤とか愛しちゃってるの?」
ますます不快な顔をしてきた翠に、遠坂は頬を膨らます。
「ボクが愛しているのは、アニメ!!! コスプレ!!! そんなオタクと一緒にすんなよ!!」
「オタクじゃないと言い張る根拠が、俺には判らねえ…」
煌が首を捻っている。