シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「電子基盤…」
桜が、その単語を口にして考え込んでいる。
「どうした、桜」
「あ…はい。実は、氷皇と酷似した銀色の男が櫂様の意識を奪った後、懐から万年筆のようなものを取り出して…青光を発したんです。私の裂岩糸がそれに溶かされた瞬間…一瞬ですが、電子基盤みたいのが見えまして…」
どういうことだ?
俺は目を細めた。
「万年筆?」
その単語に反応したのは煌で。
「万年筆から青い光って…俺、木場に向かう途中、自警団に襲われたんだ。"それ"で。何の武器だ?」
自警団?
「しかも。いないんだ。車からの攻撃なのに…運転手も誰も。万年筆だけが浮いて、まるで見えない誰かがいますっていうように、攻撃だけしてきやがってさ。更には制裁者(アリス)めいた奴らの同時攻撃さ」
そして煌は顔を険しくさせて。
「制裁者(アリス)と言えばさ、その銀色氷皇…俺を"BR002"って言ってたんだ。あいつ…制裁者(アリス)の関係者なのかな」
「見えない誰か…」
今度は翠が考え込んでいる。
「まさか…《妖魔》? 姿なき異常事態って…《妖魔》?」
「何だ、それは…」
俺の問いに翠は言った。
「皇城は…陰陽道道教の流れを汲む特殊家系なんだ。表向きは政界・財界・経済界…至る所に顔出しているけれど、本業は…《妖魔》祓い」
何らかの力で暗躍して、日本を守っている古き家柄だとは知っていたけれど、具体的な生業を耳にするのは俺も初めてだった。
それくらい皇城についての情報は隠匿され続けてきており、そして紫堂に情報が流れないくらい、皇城の方が格上だということもあるだろう。
「また…ゲームや漫画が好きそうな、ケッタイな世界観で」
遠坂のぼやき。
「ば、馬鹿にすんなよ!! 日本は、皇城の活躍によって栄えてきたんだからな!!? 俺達が守ってきたんだぞ!!?」
翠がキーキー怒る。