シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
僕は――
櫂だから傅くのであって、櫂に似た男に傅く気はない。
櫂という存在が大切だから、今まで櫂に仕えてきた。
紫堂という次期当主に、仕えたいわけではないんだ。
――力尽くで、言うことをきかせてやろうか。
――僕をなめるな!!!
僕の電磁波は…久涅の前で無効化され、体術は久涅の速度と威力に敵わなかった。
まるで五皇を相手にしているような強さ。
――さて、玲。体に恐怖を刻み込んで、言うことをきかせてやるか。
久涅の顔には残忍な笑いが浮かぶ。
久涅は僕のズボンからベルトを引き抜くと、それを緋狭さんに手渡した。
――緋狭。これで玲を打て。
一瞬、緋狭さんの顔が曇る。
――忠誠の証をたててみろ。
そうして久涅は僕の服を破いて、僕の両手を掴んで俯せに倒した。
そして重なる両手を足で踏み付け笑った。
――緋狭。出来ぬなど言わぬよな…?
緋狭さんは――
僕の背中にベルトを振るった。
僕は――
緋狭さんにやられているのか。
背中の皮膚が破ける痛覚よりも、信じられない現実に、僕の心が苦しみ…だから僕は声を上げた。
何度も緋狭さんの名を呼ぶ。
母のようであり、姉のようである…緋狭さんの名を。
いつもいつも、僕を見捨てずに救い続けてくれた、緋狭さんの名前を。
だけど緋狭さんは――
久涅がいいというまで、僕を叩き続けた。
背中が燃えるように熱くて。
息が出来ないくらいに痛くて。
見ないでも判る。
僕の背中の有様が。
それ以上に…僕の心はぐちゃぐちゃだった。