シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


――中々しぶといな。ああ、緋狭。ここまで傷をつけてしまったら、玲が痛みに、何も言えなくなってしまったではないか。早く疵を治してやらないとな…。


そんな久涅の声が聞こえて、緋狭さんの声が重なったけれど、その時の僕は意識朦朧としていて。


――玲。すまぬ。


そんな緋狭さんの声と共に…腕に何かが刺さり、何かが体内に入っていく感触がした。


僕は――死ぬのだろうか。


櫂の危機なのに。


ああ、芹霞。


僕はやっぱり君を手に入れられないの?


――背中の痛みが薄くなった。


ああ、夢でも見たのかとほっとして目を開ければ…


――よう、玲。


悪夢はまだ続いていて。



――譫言をいっていたな、"櫂"と"芹霞"とな。芹霞とは…櫂の恋人ではなかったのか?


――違う!!! まだ櫂のものではない!!!


思わず言うと、久涅がにやりと笑った。


――ほう、お前…櫂の想い人に横恋慕しているのか。そんなに"芹霞"というのはいい女なのか、ん? 緋狭、お前の妹なら、中々のものだよな?


そして下卑た笑いを顔に乗せて。


――お前が言うこと聞かないのなら、櫂は殺すしかないな。


久涅の強さは尋常ではない。


だけど…櫂は1人じゃない。


――――お前が櫂に与(くみ)する限り、


僕1人の力は弱くても、仲間がいる。


――櫂を殺すぞ?


そして何より櫂は強いから。


いや違う。


櫂が強くて、強い仲間がいても。


僕が櫂を守るんだ。


僕が!!!


――櫂を思い通りに出来ると思うな。何としてでも、僕は櫂を守る。例えそれで命がなくなっても!!!


――紫堂の警護団を相手にしても?


それは櫂を守る組織で、僕の管理下で。


ああ!!!


そうした事態を櫂に見せたくない。


あいつを傷つけたくない!!!


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