シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

万が一ゲームに櫂が負けてしまったら。


芹霞までもが久涅に取られる。


僕の目の前で繰り広げられたあの光景。


櫂と同じ顔が、芹霞の唇を奪ったあの時。


僕は感じたんだ。


久涅は――

僕と櫂が好きだからという理由以外に、芹霞に興味を持っていると。


厄介だ。


厄介過ぎる。


ここまで――

僕の恋路は障害が入るのか。



ザアアアア。



僕は、目を瞑って頭からシャワーを浴びる。



ずきん、ずきん。


傷痕が水に酷く傷んで、脈打ってくる。


切ない心を抑えるには、丁度いい痛みなんだろう。


我を忘れるような痛みでもって、恋の辛さを薄めることが出来るなら。



何でもいいから――


とにかく今は、気を引き締めないといけないんだ。



――玲くんなんて、大嫌い!!!



突如閃光(フラッシュバック)のように蘇る記憶。



「はは…駄目だ。消えない…や…」



僕の空笑いだけが、風呂場に響いて。



――…虚しかった。
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