シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
僕は冷たいタイルに背中をつける。
痛くて痛くて熱を持つ背中に、タイルの冷たさは気持ちよくて。
冷たさにまた、ずきずきと痛む。
「芹霞…」
僕の声は、いつも以上に切なく反響して。
より一層、心が疼いた。
「芹霞……好きだよ…?」
口にすると、尚一層自覚してしまう。
滾る想い。
焼き付く胸の内。
今にも熱いものが溢れ出て、僕を溶かし尽しそうだ。
そこまで深く、僕の身体に刻まれた芹霞という存在。
そんな状態で、どうして芹霞を拒めると思っていたのだろう。
櫂を守りたかった。
芹霞を守りたかった。
だけどそれは…結局は僕だけの自己満足。
現実はそんなに甘くはなくて。
渡したくない。
櫂にも煌にも久涅にも。
好かれていたい。
愛されたい。
――玲くんなんて、大嫌い!!!
ずきん。
ずきん。
痛いのは、背中なのか…心なのか。
君は今、何を思っているのだろうか。
僕のことなんか忘れて、櫂のことを思っているの?
そうだよね、君の心は櫂ばっかりだもんね。
君を避けていた理由を知っても尚、僕を嫌ったまま…このまま行くつもりなの?
僕なんか、どうでもいい?
僕とはもう…終わり?
――ああ…!!!
気狂いそうだ!!!
僕は濡れた髪を両手で掻き毟った。
「芹霞――…
僕を…嫌わないでくれ。
せめて…前みたいに…僕に笑顔を見せてよ」
そう――呟いた時だった。
「玲くん、ごめんなさいッッ!!!」
突然芹霞が、風呂場の扉を開けて飛び込んできたのは。