シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
一緒にシャワーに濡れる芹霞が叫んでいる。



「玲くん、玲くん、ごめんなさいッッ!!!

あたし玲くん大好きだから、嫌ってないからッッ!!!」


きっと――


僕の呟きを聞いていたのだろう。


真っ正面から、芹霞が僕に抱きついてくる。



「あたし寂しかったの、玲くんが櫂とべったりだったからッッ!!


だけど判ったの、玲くん櫂を守る為に…!!!」


夢かと思った。


だけど、ずきずきとした傷の痛みが現実のものなら、この思いがけない展開もまた、現実なものだと証明していて。


驚くよりも何よりも、嬉しくてたまらない。


ああ――


愛しい僕の芹霞。



本当なら直ぐにでも抱きしめ返したいけれど。


君の指先が、僕の傷痕にモロ食い込んで。


「!!!」


思わず声を上げそうになった僕は、反射的に芹霞を回して、後ろから抱きしめる。


本当に――反射的だった。


頭上からはシャワー。


ずぶ濡れの僕達。


ずぶ濡れ――

そうずぶ濡れで。


制服は冬服いえど、ブレーザーを脱いでいれば、薄手のブラウス一枚。


愛しい女性が…透けた服で、僕と密着していて。


僕の手は…芹霞の心臓の…胸の位置にあって。


とくん、とくん。


少し早い鼓動は…誰のもの?


芹霞の温もりが…柔らかさが…

妙に生々しく伝わってきて。


今まで――

失う恐れと切なさに喘いでいた分、加速する速度は急激で。


ああ、何やってんだ、僕。


駄目だ、このままじゃ。


やばい。


本気でやばい。



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