シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「煌、お前はテスト後も…芹霞の護衛について、芹霞に道草させずにきっちり此の家に戻せ」
櫂様が、低い声音でそう言った。
「……。芹霞の携帯に、"シマちゃん"からメールが入っていた。土曜日である明日。今度こそ"ティアラ姫"を一緒に買いに行きたいって」
「お前、メール見てきたのかよ、さっき!!!」
煌が軽く睨むと、櫂様は苦笑した。
3日間会えずに募らせていた想いは、不安を駆り立てていたのだろう。
芹霞さんが知ったら…大騒ぎする気がするけれど。
「なあ…櫂。いくら芹霞だって、こんな事態で出かけようとは…」
そして言葉を切った煌は、そして橙色の頭をがしがしと荒く掻き、
「……行きたいと言い張るな。間違いなく。学祭でようやくZodiac潰せたと思ったら、今度は学祭中に知り合ったという"シマちゃん"と不細工"ティアラ姫"。もう本当、あいつの度重なる好奇心を消してくれよ、あいつのおかしな"うっとりポイント"、矯正してくれよ~ッッッ!!!」
そう叫んだ。
「今回ばかりは同性で、更に"ティアラ姫"好きらしく…芹霞に感性が似ているとなれば。こちらの牽制が通じる相手でもないしな。きっと意地になって、会いたいと駄々こねるだろうが、力ずくで抑えつけろ」
「ねえ…櫂」
珍しく、玲様が…端麗な顔を引き攣らせている。
「見たメールって…それだけだよね?」
静かに向けられる漆黒の瞳。
痛いくらい真っ直ぐに…鳶色の瞳に切り込むその瞳は。
「中々…いい勉強させて貰ったよ?」
にやり。
口端吊り上げて笑うけれど、目は決して笑っていない。