シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――玲くんなんて大嫌い。
もうそんなことは言わせない。
そんな事態にもうさせない。
僕が全てを守り、僕が全てを貰う。
それくらい――
望んだっていいだろう?
「はっくしょんッッ!!」
ドアの外から、芹霞のくしゃみが聞こえた。
「ああ、折角作った"つっぺ"~!!!」
鼻に詰めたティッシュが飛んだらしい。
「こ、こんな間抜けな姿、誰にもみられなくてよかった…」
凄く焦る声が聞こえる。
僕に聞かれているとは思ってないみたいだ。
悪戯心が芽生えた僕は、わざと話しかけた。
「芹霞、そこは寒いだろう? 濡れた服脱いで、こっちにおいで? 僕が暖めてあげるから」
そう言ってみると、何処かに何かが派手にぶつかった音がした。
転倒でもしてしまったのか。
「ななな!!! あたしはこっちで紫茉ちゃんから借りてたシャツに着替え終わってるし!!! 第一、玲くんまだ着替えてるじゃない!!! 17歳の純情なオトメに~、もう、子供扱いして~!!!」
可愛い、照れているんだ。
子供になんか思っていないよ?
君はいつだって、僕の愛しい可愛い女性だ。
君に触れたくて仕方がない僕は、君を意識しすぎて…いけない想いを抱いているけれど、それくらいは許してね?
再び、芹霞の派手なくしゃみが聞こえた。
「ああやだ、別に寒い訳じゃないのなら…誰か噂している…ぶわっくしょんッッ!!! やば、ティッシュがもうない…」
そしてドアをノックされて。
「玲くん、ちょっとだけこっちに来るの待ってね。まだこっちに来ないでね。すぐ処置して帰ってくるから!!!」
"処置"
また鼻のティッシュが飛んだのか。
ぱたぱたと遠ざかる音がした。