シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
くしゃみの多発に"つっぺ"が飛ぶ。
ティッシュを求めようと廊下に出た時――
玄関が開いているのに気付いた。
誰かが外に行ったのだろうか。
それとも。
誰かが外から入ってきた?
刺客!!?
そんな時だ。
「狂ったのか、朱貴!!!?」
紫茉ちゃんの声が聞こえたのは。
玄関のドアが開いていたのは、朱貴が帰ってきたから?
狂うって何?
皆のいる居間に赴くと…
「ななな!!!」
白衣姿のままの朱貴が、櫂の鳩尾に拳を入れている処で。
櫂が…崩れ落ちそうになる我が身を、片膝をついて必死に支えていて。
煌と桜ちゃんが朱貴を取り押さえようとしていた。
紫茉ちゃんと小猿くんも、2人に加勢してくれている。
「芹霞!!! 櫂連れて此処から出ろ!!!」
いつもの櫂なら、避けられたのだろうか。やられてもここまでのダメージは受けなかったのだろうか。
それとも。
朱貴という男は、櫂を一撃で崩せる程の…凄い男なんだろうか。
煌と桜ちゃん、そして紫茉ちゃんと小猿くんが朱貴の相手をしている間に、あたしは櫂を背負うようにして居間から出た。
居間では何かが破壊される凄まじい音が鳴り響いていて。
「櫂、大丈夫!!?」
櫂の意識が朦朧としているらしく、顔が虚ろだ。
櫂がこんなになるなんて…朱貴の強さは本物か。
このままで外に出て、刺客に狙われれば…あたしも櫂も終わりだ。
誰か…居て欲しい。
櫂を守れる、強い誰かが!!!
「玲くん!!!」
あたしはずるずると櫂を引き摺るようにして、浴室に向かう。
居間の状況は気になるけれど、櫂をこれ以上…朱貴の好きにはさせない。