シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「…み、みみ見たの!!?」
何だろう、玲様のこの慌て様。
「いや…見えただけだ。随分と色取り取りで、意味ありげなものをな」
「桜…部屋の中、すげえ寒くねえか?」
「少し…暖房を入れた方が…」
一体どんな内容だったのだろう。
私が見ていた画面には、特に櫂様が気分を害するものはなかったはずだけれど。
「はは、はははは。
お茶でも入れて来るね」
玲様は空笑いを繰り返して、立ち上がった。
「いいや、気を遣わず…ここにいろよ、玲」
「いやいや櫂こそ気を遣わず」
紫堂の従兄弟はにっこりと微笑みあう。
だけど…
玲様の微笑みの方が押されている気がする。
珍しい。
そこまで知られたくない、メール内容だったのか。
「いいよな…お前達。携帯弄れて」
馬鹿蜜柑がぼやいた。
「俺なんて触った途端火吹くからな…。吹かなければ芹霞とラブラブメールできるのに…。はあとマーク一杯使って愛を深めるのに…」
ぶつぶつぶつ。
独り言のような呟きに、櫂様が過剰に反応した。
「煌も、絵文字使う派なのか!?」
「…使っちゃ駄目かよ?」
櫂様は項垂れ、暫く考え込んでいた。
メールというのは奥深いらしい。
私は十分文字だけで、連絡事項が伝わるからいいのだけれど、彼らは色取り取りのマークが必要なのか。
文字以上の何を望んでいるのか。
文字以上の何が伝わるものなのか。
感情に乏しい私には、よく判らなかった。